音速恋

シンクロニシティ

「あの……これ落としましたよ」

「え？あっ！すいません」

あまりお酒も飲んでいないのにあたふたしている隣の男性に名刺入れを差し出した。

さっき渡した名刺を大事そうに入れた名刺入れだったが、本人はジャケットにしまったつもりだったのだろう、ジャケットの内ポケットを何度も見てから名刺入れを受け取った。

今日開かれた記念パーティー後にホテルへ戻ってフロントで鍵を受け取とうとしていると、あたふたした日本人男性が「鍵を無くした」と言ってフロントへ駆け込んできた。

日本人男性は日本語で伝えるが、フロントにいたスタッフは日本語がわからないらしく顔面蒼白になっていたので、横から英語でスタッフに伝えてあげた。

男性はしばらくあたふたしていたが、スタッフが男性の部屋の鍵はフロントで預かっていると言ったので、日本語で男性に伝えると「ありがとうございます」と何度も頭を下げてきた。