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ただ、舞い散る花を見ていた。その桃色の花びらはまさしく春を物語り、まるで始まりと終わりを告げているようだった。自分はこんな立派なことを思う人間じゃない。ましてや考えるはずがない。しかし、自分の目の前にはそう考えてしまうほどの「美」が見えていた。
「ねぇー残念お兄ちゃん。早く行かない?」
声変わりのしない高い声が溜息をつくように後ろから話しかけてきた。
「すまん、すまん妹よ。ちょーと桜を眺めてたらぼーっとしてしまった。」
そう適当に返すとすかさず、
「どうせ、女の人眺めてただけでしょ。もう2年生なんだからさぁーもっとちゃんとしてよー。」
そう言われると自分は返す言葉がない。そこで、自分は話を変えようとした。
「でも、奈菜ももう高校1年生かぁ。うちの高校も予定通り主席で入学したし、学校側から挨拶の時、才色兼備で運動神経抜群の超絶美少女!みたいな感じで紹介されないかなぁ。」
と言うと奈菜は、
「後半はどうでもいいから。でも、これでとりあえず奨学金も手に入ることだし、なんとかなりそうだよね。」
と安心した声で話した。
「そうだな。これからもお兄ちゃんバイト頑張っちゃうぞ!」
と元気よく言うと、
「お兄ちゃんうるさいし、キモい。」
奈菜は相変わらず毒舌だな。でも、こいつのおかげで今日までなんとか生活できていたんだ。感謝しないとな。
なんやかんやで、学校が始まって3ヶ月が経った。今年も1回目の定期試験を学年トップで勝ち取り、成績もトップを取り続けていた。
うちの高校では、夏休みの2週間前に2回目の定期試験が待ち構えている。しかし、7月上旬一つの問題が発生した。
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