episode 2 西国へ

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行商人を介して放った3人の間者、ナナキ、ロキ、ヌーラは打ち合わせ通りにサウス・ガーデン領内に散会し予定通りの行動を開始した。 先ず目に飛び込んだのは極端な貧富の差が生まれてる町の様子である者は羨まれるほど贅沢に暮らし、またある者はまるでスラム街の様な区画で日々の食事にも事欠く様な生活をしている。 特に北側、南側の宰相府により近い場所に住まう住民はそれこそ経済成長真っ只中の様な雰囲気で豪遊を楽しんでいて離れるにつれ状況は悪くなり最下層だと位置付ける最南端と最北端に至ればそこには住処を失われ路頭に彷徨う人々やストリートチルドレンの様な子供達、挙句売春にまで手を出す少女迄いる様な…かつてのサウス・ガーデン領ではとても考えられない姿がそこにはあった。 特に女性のナナキは時に涙を流し仲間や行商人に支えられながらアジトに帰ることも多い、その度に思うのは『この惨状をレム様に逸早くお伝えしたい…』の一点。 「こんな惨状をレム様がご覧になったらどれだけ心を痛めるだろう…アレフめ、場合が場合ならその首切り落としてやりたい」 「ナナキの言う通りだ、我々が暗殺者なら恐らく奴を仕留めに忍び込んでいる」 宰相府の南側を担当したヌーラが口をこぼす、北側担当のロキはそんな2人のケアをすると共に憤りを覚えていた。 「何にせよ、我々が独断先行しようとするならば、レム様はお嘆きになる、少し民衆に聞いて回ったのだが富裕層に位置する連中はアレフに賄賂を渡して今の生活を手にしたそうだ、最下層に位置する民達はそんなやり方に疑問を呈して拒み続けてる連中が殆ど、中間層の奴らは半々でも利益のある連中らしい、更にはアレフの息子であるイングリットに媚を売り、この状態を転覆しようと目論んでいる」 「そーゆー事ね…私が聞いたのはイングリットを動かす為に娘や女性を彼の元に差し出してるって事とやはりレム様の言われた通りアレフへ疑念を息子は抱いてる…と言う事ね」 「無類の女好きと言うのは事実らしい…奴は女さえいればどうとでも動くと言う、南側を聞き回った中で手に入れたものだ」 「女たらし…まさに女の敵だわ、イングリット」
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