prologue 追憶

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「良いか…ランスロット、命に代えても我が息子ルリアンを義弟の治める騎士団領に逃がせ、これが最後の命になるが頼むぞ」 「アースレイ宰相…しかし」 「命令だ!必ず責務を果たせランスロット」 「……御意。」 「これで良い…これで心置き無くアレフの反乱部隊と戦える、時間がない…急いで地下道から脱出し爆薬を以って道を封鎖するのだ、行け!」 宰相府の彼方此方に火の手が上がり宰相率いる近衛騎士隊はアレフ宰相補佐官の率いる白狼騎士隊と最後の決戦に向かった、まだ8歳の王子ルリアンはその命を受けた副隊長ランスロットの小脇に抱えられ万が一の脱出口である執務室のデスク下にある入口から地下道へと逃れる。 副隊長と行動を共にしていた天才騎士の異名を持つルカインは彼をガードする様に道案内をしながら薄暗い地下道を松明で照らして進み奥迄来るとその先にある鉄の扉の前で脚を止める、そこから先は洞窟内の様な足場の悪い道で大人1人が通れる様な場所、脚を踏み入れると裏側の岩場に爆薬を仕掛け火薬の導火線に松明で火を付けた、導火線は勢い良く爆薬へ一直線に進みランスロットとルカインは王子を連れ岩陰に身を隠して遣り過し程なくして導火線は爆薬に引火、轟音と共に岩肌を崩し入口を塞いだのである。 「これで一安心か…」 ふぅ…と息を吐くランスロットだがルカインは首を左右に小さく降る 「時間稼ぎにはなりますが急ぎ騎士団領に赴いて総督に報告致しましょう、止まっていては追っ手に追撃されますし我々だけで複数の白狼騎士を相手にするのは無理です」 「そうだな…しかし…」 ふと小脇に抱えた幼い王子の顔を2人で覗き込むと不安定な格好ながら静かに寝息を立てている。 「これは大物になられるかもなルカイン」 「流石はアースレイ宰相のご子息です…今から楽しみですね」 「うむ…さぁ先を急ごう」 「はっ!」 ランスロットはルリアン王子を背中に背負い直すとルカインと2人洞窟を抜け北へ目指した、結局ルリアン王子が目を覚ましたのはその先にある小高い丘グリーンヒルで休息を取った頃、この時自分の故郷であるサウス・ガーデンが燃える様を目に焼き付るも涙は一切見せなかった。
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