2人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
泣いていた。
気がつくと、泣いていた。
そして、ここ数日は泣いてばかりいた。
だから、周りの人は心配ばかりした。なかには、体調を気遣う人までいた。
彼と急に連絡が取れなくなってから二日後、本人の死体と対面した。
すっかり変わって――誰だかわからないくらいに――しまい、冷たい体躯となった彼と。
しかしそれは、もはや彼ではなかった。
彼ではなく、二度と逢えない――触れることも、話すこともできない――という事実。
それは目一杯あたしを悲しませ、どこまでも孤独にした。
いっそのこと死んでしまおう、とも考えたが、死んでも彼に逢えないと思うと、瞬間、興味がなくなってしまった。
孤独。
四月十四日生まれ、そのくせ春が嫌いで、冬が好きだった。
冬が近付くとだんだんいきいきしてきて、鍋をよく作ってくれた。
おでん、すき焼き、水炊き、ふぐちり、どれも炬燵に入って、二人でつついた。
夏の盛りなのが、ほんのささやかな救いだった。
どうしようもなく寂しくて、でも埋めてくれる人がいないんだから、友達も職場の同僚も姉妹も、やっぱり彼がいないとな、と思わせるだけで、どんどんどんどん寂しくなっていった。
それで次第に身体が軽くなって、顔つきも変わっていって、生きているのか死んでいるのか、区別がつかなくなっていった。
周りの人間があまりにも、病院、病院、とうるさいので、黙らせるために行くことにした。
一体どこを治療させるつもりなのかな、と思いつつ。
最初のコメントを投稿しよう!