チョコレートケーキ

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泣いていた。 気がつくと、泣いていた。 そして、ここ数日は泣いてばかりいた。 だから、周りの人は心配ばかりした。なかには、体調を気遣う人までいた。 彼と急に連絡が取れなくなってから二日後、本人の死体と対面した。 すっかり変わって――誰だかわからないくらいに――しまい、冷たい体躯となった彼と。 しかしそれは、もはや彼ではなかった。 彼ではなく、二度と逢えない――触れることも、話すこともできない――という事実。 それは目一杯あたしを悲しませ、どこまでも孤独にした。 いっそのこと死んでしまおう、とも考えたが、死んでも彼に逢えないと思うと、瞬間、興味がなくなってしまった。 孤独。 四月十四日生まれ、そのくせ春が嫌いで、冬が好きだった。 冬が近付くとだんだんいきいきしてきて、鍋をよく作ってくれた。 おでん、すき焼き、水炊き、ふぐちり、どれも炬燵に入って、二人でつついた。 夏の盛りなのが、ほんのささやかな救いだった。 どうしようもなく寂しくて、でも埋めてくれる人がいないんだから、友達も職場の同僚も姉妹も、やっぱり彼がいないとな、と思わせるだけで、どんどんどんどん寂しくなっていった。 それで次第に身体が軽くなって、顔つきも変わっていって、生きているのか死んでいるのか、区別がつかなくなっていった。 周りの人間があまりにも、病院、病院、とうるさいので、黙らせるために行くことにした。 一体どこを治療させるつもりなのかな、と思いつつ。
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