メモリー

ニュー・チャイルド

時は、現代から数百年後。
今や人の記憶は、小さなメモリーカードに保存し、そのメモリーカードを使い他人と記憶を共有したり、嫌な思い出を削除することも可能になった。

このメモリーカードによる記憶管理のできる子供、ニュー・チャイルドが産まれたのは、今から約四十年も前らしい。当時は反対派が大半だったが、何故かいなくなったという。

｢おい、またアイツあの本読んでるよ｣

｢あんな何十年も前の本なんか読んで、思想家にでもなる気かよ｣

僕が本を読んでるだけで、周りからバカにされる。僕も皆と同じ、ニュー・チャイルドなのに。でも、バカにされる理由はわかっている。僕が読んでる本は、反ニュー・チャイルド派の人が書いた本なのだから。

だが、いくら僕がバカにされても、この本を読むのはやめられない理由がある。
ハッキリ言えば、今じゃあり得ない考え方だからだ。