赤身色の天井の下で

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「仕事の無理が祟ったのではありません、私が今一度その人間の体に感染した時、あぁ当然酒は振る舞いませんでしたが、とにかくその時、細胞達はボロボロになっていました」 私は続ける。 「酒は万病の薬。そう言います。人間が飲めばタダ酔っ払うだけのことですが、皆様細胞は違う。酒を飲まねば生きて行けないのです」 「、、、その人間はどうなったのだ?」 赤血球大名の声は少しだけ怯えている様にも聞こえた。 「細胞が朽ちれば人間は生きて行けぬ。その者は程なくして命を落としました」 「そんな、、、!」 赤血球大名は目を閉じた。歯を噛み締め、何か大きな想いを心の中で必死の堪えているようだった。 赤血球大名のその姿を見る気にはなれず。私は目を逸らしてしまった。 「だが、今ご主人が、風邪を引けば、、、」 「細胞の皆様が死んでしまいます。ここはどうかご決断を、、、」 「む、、、、」 赤血球大名は深く悩む。眉間に皺を寄せ、その太くたくましい左右の眉毛がくっついてしまうのでは無いかと言うほどに。 胡座をかき、頭を捻り続け数十分が経ったかと思った時。 「もう良いでは無いか、赤血球」 私の頭上から、凛とした麗しい声が鳴った。その声色は風鈴を思わせた。 赤身色の天井に着物姿で足を貼り付け、さながら蝙蝠の様に珍妙な体勢でこちらを見つめる小柄な玉のような少女だった。私はついついその素っ頓狂な光景に見惚れてしまう。     
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