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 二学期期末試験が終わって、あとは冬休みを待つだけになった。授業が午前で終わるようになり、放課後雪会さんと街に遊びに行く時間が増えて俺は嬉しい限りだ。  高村雪会(たかむらゆきえ)を『さん』付けで呼ぶのは敬意を表して、ではない。見た目から来た雪会のニックネームだった。  深緑色のブレザーの、スカート膝上0センチ、短く清楚な白い靴下。左手首にはシルバーの華奢な時計、右手首に同色のブレスレット。軽やかな長い髪、小さい頭に白い肌、そこに上品な縁なしの眼鏡を掛けていて、一見『美人教師』のようで、それでみんなに『雪会さん』と呼ばれていた。美人のオネエサンって感じの意味合いだ。  一カ月程前。そんな人から俺に『好きです』なんて声が掛かるとは、全然思っていなかった。  あんな知的な顔をしていながら、実際雪会さんは子供っぽい。彼女はいつもなぜか何かしら困っていて、俺はそれに気が付いては、知らん顔する訳にもいかずに手を貸していた。  今思うと、俺は雪会さんのことが好きだったから、困っているのが目に付いたし手を貸さずにはいられなかったのかも知れない。     
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