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画面が真っ白になった。
何度かちかちかと瞬いたと思ったら、これだ。
電源が落ちているのかいないのかも、もはやわからない。
「ねえお兄さーん。これって壊れちゃったんですかねー?」
学校帰りにさっそくケータイショップに駆け込んで、イケメンなお兄さんに詰め寄ってみる。
こないだも来たけれど、そのときにはいなかった店員さんだ。
「あー……そう、ですね」
茶色い髪をワックスで遊ばせた、なかなかおしゃれなお兄さんは、慣れた感じでにこりと笑った。
「何か不審なサイトにアクセスしたとか、そういうことってありました?」
「えっ、わかんない。詐欺サイトっぽいのに繋がったことは何回かあったけど、最近じゃないです」
「そうですか。これ、ちょっと電源落とせないんで、僕らのほうで強制的に落とさせてもらってかまいませんか? ただ、ウイルスに感染していたりするとデータの保証はできないのですが」
データが消えているかもしれない、と言われて思わずうめきそうになった。友達と交わしたメッセージのやりとりが全部消えていたら、どうしよう。画像も音楽も、バックアップなんてとってなかった。
「お兄さん、なんとかうまく直して! データ消えたら私、生きていけない」
「SDカードにバックアップとってないですか?」
「カードは入れてるけどデータ移行とかコピー的なことはなんもしてなかった……。えー、ちゃんとやっとけばよかったあ」
「いや、まだデータが消えると決まったわけではないですから。僕が、できるかぎりがんばってみます」
少し幼げに、お兄さんが言う。
なんか可愛いなと思って、つい、うなずいた。
やばい私、恋に落ちちゃったかも。
「……ちなみにお兄さんって、名前なんていうんですか」
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