第4章 玉響花火

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朝、ふと起きると目の前には端整な顔立ちをした影千加の寝顔があって、俺はそれをぼんやりと見つめた。外はまだ薄暗く、時計を見るまでもなくまだ起きるには早い時間だと分かった。 「…朝イチでイケメンの顔見るのも大分慣れてきたな、俺」 最初の頃は真横で眠る影千加に戸惑っていたけど、今ではそれが嘘のようだ。 俺の体の上に乗っている影千加の腕を下ろしながら昨日のことを思い出す。所々記憶が曖昧な部分もあったけど、大体は憶えていた。 あの怖い影と音のこと。コイツが俺を抱きしめたこと。そして、落ち着く心臓の音。 去年影が見えた時は、周りには可笑しな目で見られたっけ。あの純ノ介でさえも難しい顔をして一歩引いたところで俺を観察していた。まぁ当時は俺たちはそういう間柄だったからそんなモンなのだけど。 そういう体験があったからか、昨日の影千加の対応というか、気遣い?は正直嬉しかった…と思う。 (…ああいう優しいところがあるから嫌いになれないんだよなぁ。節操無しの変態なのに) お礼に今日の朝ごはんは俺が頑張って作るかと思い立って薄い布団から出ようとした時、ぐいっと引き寄せられて体は元の場所に戻ってしまった。 「ちょっ!え!?」 何なんだとその原因の方に顔を向ければ、じっと俺を見上げてくる影千加。 お前起きてたんかい。 「おはよ」 「お、おはよう。つーか離せ!いきなりでビックリしたじゃんっ」 「ほーう、それはしてやったり」 「何をぅ!?」
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