間違い電話

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わけがわからない。どうして私の電話番号が見知らぬおばさんの携帯に 登録されているのか。 「とにかく、間違いですから。私は直美さんではありません。」 私はそう言い捨てると、電話を切った。 それからまた、同じ番号から何度も何度も着信があったので、私はその番号を 着信拒否にしたのだ。 まったく、疲れているのにカンベンして欲しい。 もうすぐここも引っ越すから、荷物もまとめなければならないのに。 私は買ってきた出来合いのお惣菜で夕食を済ませた。 私は今、人生の中で一番疲れ果てている。 そもそも引っ越すことになったのも、ストーカー被害にあったからだ。 おかげで職場も変わらなければならなくなった。 何社か面接を受けているので、見知らぬ番号にもでなければならないから、 今日の様に、電話に出ることを余儀なくされたのだ。 カーテンを開けるとやはり、あの陰湿な男は電柱の影に立っている。 本当に気持ち悪い。誰なのよ、アンタは。 幸いマンションの入り口はオートロックなので、部外者は侵入できないようになっているし、 マンションの郵便受けにも、玄関にも名前は入れていないので、個人情報は漏れていないと思う。 でも、そう思っているのは私だけで、すでにストーカーは私の素性を調べ上げているのかもしれない。     
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