雛ペンギンは影に怯える

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ディスプレイが緑色の光で様々な数値を写し出す。緑光は緊張を解き疲労を軽減する色の光だそうだが、今のボクにはとてもじゃないが効きそうにない。 『ペンギン1、こちらトレーニングマスター。ノイズチェック、オーバー』 教官が無線で呼びかけてくる。速やかに応答すべく、マイクのスイッチを入れる。 「こちらペンギン1、ボイスクリア、オーバー」 『こちらトレーニングマスター。よし、初めての搭乗だが緊張しすぎるなよ。シュミレータの感覚を思い出せ、沈んだら骨は拾ってやる。アウト』 縁起でもないこと言いやがって。教官の言うことかよ、と僕は悪態をついた。 大きくため息をついて、オートパイロットをonにしたボクはゆっくりとこれまでのことを思い返していた。 ・・・・・ インド軍の大射程レーザー兵器の大量配備に端を発する“明るい冷戦“が始まって5年が経った2026年現在、レーザー兵器の影響に目をつけた各国海軍は水中戦力を大きく増強させた。もちろん、日本の安全を司る自衛隊もその対処を迫られてしまう訳だが、なけなしの予算を使い、各国軍でトレンドになっている『小型で高速度、高運動性能の潜水艇』をコンセプトに純日本製潜水機『I-1』をなんとか配備した。
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