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「ありがとう」
優人はおだやかにいった。
「たすけにきてくれて。ここに帰ってこれてよかった。竹林くんのそばに」
誠一郎もやっと安心した顔になった。落ち着いた笑顔がうかぶ。
「もう少し休みましょう。横になってください。お昼用意します。おかゆとフレンチトースト、どっちがいいですか」
「どっちもいいなあ。でも、今はおかゆ、かな」
「じゃ、僕はネギと生姜と鶏肉買いにいってきます」
「中華風なの? 楽しみ」
優人を寝かせて布団をかぶせると、誠一郎は身支度をして買い物に出て行った。
ひとりになると優人はベッドの上から手をのばした。ローテーブルの上に自分のクラッチバッグがのっている。ひきよせて、中から携帯電話を出した。
仕事中にもかかわらず、相手はすぐに出てくれた。
「ユート? さっき竹林くんから電話もらったよ。もう大丈夫なのか?」
「うん。穂積ごめん。迷惑かけてほんとごめん。休ませてくれてありがと」
「ああ、やっぱり声、かれちゃったな」
しょうがない奴だな、といいたげな口調だった。
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