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「桜…井さん……聞こえますか?」
その声は……
吉乃!! あ…れ…声が……
辛そうな顔で俺を見上げる吉乃が見えた。
「俺はあなたに酷い事をした。俺のエゴでここへ閉じ込めた。戻っても許してくれないでしょう……」
そんな事ない! ここへ戻って来てくれただけで……同化してしまう前に会えてよかった。
最後の力を振り絞り、俺は吉乃の頬に触れた。
「……の…あ…い…して……る」
吉乃の頬に涙が伝う。その頭上からヒラヒラと薄ピンク色の花びらが降ってきた。
「俺もです……先生……」
薄ピンク色の花びら舞う。満開に咲いた花は風に乗って空を舞うーーーー
「……っん? 吉…乃?」
国立植物研究所の庭園で椅子座り、うたた寝をしていた私の頬に花びらが降ってきた。
君はソメイヨシノ……
満開に咲く花達が暖かい風に靡いて気持ちよさそうだった。
「吉乃……君の夢を見ていたよ……」
私は青白磁の空を見上げ、ヒラヒラと舞う花びらに手を伸ばした。
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