第一章

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「桜…井さん……聞こえますか?」 その声は…… 吉乃!! あ…れ…声が…… 辛そうな顔で俺を見上げる吉乃が見えた。 「俺はあなたに酷い事をした。俺のエゴでここへ閉じ込めた。戻っても許してくれないでしょう……」 そんな事ない! ここへ戻って来てくれただけで……同化してしまう前に会えてよかった。 最後の力を振り絞り、俺は吉乃の頬に触れた。 「……の…あ…い…して……る」 吉乃の頬に涙が伝う。その頭上からヒラヒラと薄ピンク色の花びらが降ってきた。 「俺もです……先生……」 薄ピンク色の花びら舞う。満開に咲いた花は風に乗って空を舞うーーーー 「……っん? 吉…乃?」 国立植物研究所の庭園で椅子座り、うたた寝をしていた私の頬に花びらが降ってきた。 君はソメイヨシノ…… 満開に咲く花達が暖かい風に靡いて気持ちよさそうだった。 「吉乃……君の夢を見ていたよ……」 私は青白磁の空を見上げ、ヒラヒラと舞う花びらに手を伸ばした。
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