甘い毒の鎖

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「幸せになりましょう。」 君が綺麗に微笑んだ。作り物のように美しく微笑んだ。 「あなたが好きよ。とっても好き。」 ギューッとこれ以上ないないくらいくっついて甘える様に君は喋った。 自分に言い聞かせるように、何度も何度も繰り返した。 「ねぇ、あなたも私が好きでしょう?」 不安そうに、僕の手を握り、僕に体を預けて不安に押しつぶされそうになりながら問いかける。 でも、僕は知ってるんだ。 解ってる。 君の瞳に僕は全く映って無いこと。 「あなたの大好物を作ったの。」 照れくさそうに広げたそのお弁当の中身は僕の嫌いなものばかり。 (あいつがいつも食べてたもの。) 「あなたの好きな色だったから買ってきたの。」 自慢気に広げたその服は僕の心を抉るだけ (あいつが最後に着てた色) 「あなたここ好きだったわよね。一緒に行こう?」 甘える様にして持ってきたパンフレットは僕の知らない場所だ。 (あいつと君の思い出の場所) ああ、きっとこれは罰なのだ。 彼が居なくなったことを喜んだ僕への。 彼が消えてしまった事を悲しまなかった僕への。 それでもまだ、君のそばから離れない浅ましい僕への。 この世は地獄だ。 君が微笑んで、甘えて、縋ってくる。 この幸せな状況で 君が僕を見ることはもう永遠に無いんだ。 だけど・・・・。 「ねぇ、傍にいてね。ずっとよ。一人にしちゃいやよ。」 脅えたように抱きついて、涙ながらに訴える君に僕は心を殺してあいつと同じ顔で応えるんだ。 「大丈夫だよ。ずっと一緒だよ。」 (ねぇ、僕を見てよ。)
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