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「うっわ原田菌がついた!」
亜子はクラスメイトとぶつかった肩を埃でも落とすかのように叩いた。
亜子の隣では成美がぶつかった主を見てにやにやと笑っている。
彼女の視線の先には醜い男子生徒がうつむくようにして立っていた。
丸々と太った身体からは常にぎとぎととした汗が湧き出しており、顔は脂肪のせいでぱんぱんに腫れたようになっており、目は瞼が厚すぎるせいで開いているのかいないのかわからないような状態だ。
原田は小さくお辞儀をした後、どすどすと短く太い足を鳴らしながら、亜子たちが歩いて来た方向へと去っていった。
「きっも。亜子、大丈夫? あいつの汗とかつかなかった?」
成美は原田が向かった方を心底嫌そうな顔で見ながら、亜子の肩をまじまじと見つめた。
「うん、多分セーフ。あーでもまじ最悪なんだけど」
「ほんと、あいつに触られた服とか捨てちゃいたいぐらいだよねー」
「ねー!」
亜子たちはげらげらと笑いながら教室へと向かって歩いた。
去ったはずの原田が、曲がり角からじっと2人を見つめていることには気づきもせずに。
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