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内線鳴らします
「杉山さん、俺たち米田食堂行きまスけど、どうします?」
正面に座る小林がノートパソコンの横から顔を覗かせた。
「ああ、悪りぃ。俺、この見積上げたらその足でY富商事に行くからいいわ」
「分かったっス。じゃ、行ってきまスね」
「おう」
正午のチャイムと同時に事務所に残っていた数名の社員たちがぞろぞろと外に出て行った。今日は弁当組は居ないようだ。俺は静かになった事務所の中で、パチパチとキーボードを弾く。
「おいおい、これを三十五掛けは無理だろう? せめて三十八だな」
一人になったのを良いことにぶつぶつしゃべりながら見積書を作る。俺のいるこの部屋は「営業課」で、基本的には朝と夕方にしか人数は揃わない。だから昼のこの時間は事務作業に最適な穴場時間なのだ。ただし「営業は外勤しろ」と煩い部長に見つからなければ、の話だが。
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