〈プロローグ〉【 anna X 】*

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あぁ、聞いたことある。確かあいつの幼なじみの下手なボーカル。 知ってたの?あいつがどこにいるか。何をしていたか。なのに千夏に教えてやらなかったの?なんで? それよりも、千夏のせいであいつが死んだってどういうこと? 千夏はあいつがどこにいるか知らなかった。ただ漠然と東京としか。 千夏は倒れたまま動かない。そのまま目を閉じている。 トイレ行きたくなってきた。まったくこんな時に。確かすぐ近くにあったはず。 「チナ、動くなよ。トイレ行ってくるから。」 千夏は倒れたまま返事もしないし、私のことも見ない。 砂浜をハーバーの方に走った。 月が雲に隠れると、浜の方は暗くて何も見えなくなる。携帯(スマホ)のライトを点けて千夏が倒れていた場所を探す。早く雲切れて。思いが通じたのか雲が切れて月が覗いた。 暗い中、白い影がフラフラと海の方に向かっている?千夏!! 砂浜を走った。でもなんて走りにくいんだ。 走りながら叫ぶ。 「チナ!チナ!待って!チナー!」 白い影との距離が縮まる。でも波の音が大きくなる。月の灯りがチラチラと輝いているあのライン、あそこが海!まずい! 波頭(はとう)の白い泡が見える。白い影の足元にはもう白い泡が。 「チナー!待って!チナー!!」 もう一度叫ぶ。あとちょっと。     
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