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2:こんな名前なんて。
「ひまわり~、お見舞い来たよ!」
15歳になってすぐ、私は倒れた。
それまでは普通に遊んで、普通に運動する普通の女子中学生だった。
この前、風邪をひいた。
それっきり、私は入院した。
「ただの、風邪なんでしょ?」
そう聞いたら、お父さんは、
「他に悪いところが見つかっちゃったから、これから治していくんだって。……大丈夫、すぐに済むよ。」
と答えていた。
そんなお父さんとは、これまで以上に会わなくなった。
早朝から深夜まで働くお父さん。
私が家に居られなくなったから、余計に会わなくなった。
別に、苦労もないし、そんなもんだって思っていたから、怒りも悲しみも無かった。
大丈夫。私はもともとひとりだったんだから。
授業参観も、運動会も文化祭も、お父さんは仕事を理由に来なかった。
他の子のお父さんは、毎回笑顔で娘たちと接している。
━私に、お父さんはいなかった━
そう、割りきろう。
いつのまにか、私はそう思うようになった。
「ひまわり、どうしたのー?」
「……なんでもない。」
どうしてお父さんは……お母さんは、私の名前を『ひまわり』にしたんだろう。
ふと、思った。
こんなに卑屈で
こんなに性格が悪くて
下ばかり見ている私。
『ひまわり』とは真逆の、私……
「……自分の名前が、どんどん嫌になってく……」
つい、呟いた本音。
「なんでー?可愛くていいじゃん!」
うっかりしていた。周りには友達が来ていたのをすっかり忘れていた。
「……ひまわりの、イメージは?」
「んー、明るくて、元気で?……太陽の方をいつも向いてる!」
友達の率直な意見に、ついつい笑みがこぼれる。
「……でしょ?……私とは真逆じゃない。」
だから、嫌だったのだ。
こんな名前なんて。
『ひまわり』という名前なんて……。
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