『COMPILER』

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「そうです、よく分かりましたね。心臓病で亡くなった子供の親が依頼してきたのですが、代金を支払うが要らないと言われた」  乙訓の人形には、何かまで復元されている。人間をモデルにした場合、その死因が分ってしまう。人形のどこにも、そんな傷などないのに、この子は交通事故だと分かる。  どこかに歪みがあるのか、俺は手に取って確認してしまった。  それでゆくと、美湖那の死は焼死ではない。 「首の骨が折れている。高い所から落とされたのか」  あちこちの骨が粉々になっている。死因は首の骨折であるが、こんなに骨が粉々になるなど焼死ではあり得ない。 「言葉も語ってくれると、楽なのに……」  そこで、乙訓は人形をじっと見つめていた。 「喋りますよ、この子は熱いと言いました。風呂場で焼かれていたので熱いのかと思ったのですが、死因は違っていた」  そうなのか、乙訓は人形と話しながら製作しているのか。  もしかして、俺は勘違いをしていたのではないのか。飛び降り工作は複数だった、焼死は一人だと思っていたが、チームではないのか。 「資料、ありがとうございます」  急いで帰り、資料を読みたい。  そこで、俺はもう一つの可能性に気が付いた。 「この人形、犯人を見ていますね」  同じ人型であるならば、魂というものが誤って入ってもおかしくはない。そんな風に、乙訓の人形を見ると思う。 「でも、声が聞こえるのは製作中だけで、今は話せないけど……」  人形で死因をプロファイリングできる。でも、人形には死がない。 「落されたのは公園でした。木の上からだと言っていますが、木に登ったのではなく、木の上にある何か。母親は、友人と喋っていて子供の姿が見えなくなったと気付いて、探した時には倒れていた」  骨は折れているが、外傷が無い。母親には、子供に何が起こったのか分からなかった。子供の具合が悪くなったのではと、急いで家に帰ってしまった。  そこで、人形泥棒と遭遇し、風呂場に閉じ込められる。そして、風呂場に電流を流され、焼けてしまった。 「美湖那ちゃんを落したのは、クレーンみたいだ……」  公園の木の上には、何も無かった。 「俺が助けに行きます!」  乙訓も、過去を見ていた。そして、美湖那を助けに行くという。 「乙訓さん」
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