第一章 ヤーモモ劇団の女座長 ヤーモモ誘拐される!

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私腹を肥やすために、あくどい商人と手を結び、民には重税を 課すなど、国民は苦しんでいる。 そんなある日、たまたま通りかかったかっての王の側近だった 若者の乗った船により、母国の実情を知った王女は、自らが 海賊を名乗り今では、悪い王に従っている母国の商船を襲い、 力と財力を蓄え、やがて前の国王を慕う若者たちを指揮して、 悪い国王を倒し、王女の一族を開放し、手伝ってくれた かっての王の側近だった若者と結婚して新たに国を治める ことになるというものであった。 船に乗った王女が嵐に襲われる場面や、流れ着いた島で王女 であったことを明かさず、次第に島民に慕われるようになり、 母国の船に乗り海賊として悪い国王配下の船を襲撃するシーン等 迫力のある演技で見るものを釘付けにする役者人としての力量 があり、なかんずく主人公を演じるヤーモモと王の側近だった 若者を演じたみーともに観客の熱い視線が注がれた。 劇の終了後の挨拶では、割れんばかりの拍手と、歓声がなり 止まなかった。 「やあ、これは素晴らしい出し物でしたね。流石にトート市で 評判になった劇のことだけはありますね」、と、ザ・レは珍しく 興奮して言った。 「何といっても、ヤーモモがいいわ!断然好きになっちゃったわ!」 と、ミ・シーが目を輝かせて言った。 「ミートモの演技もなかなかでしたね」と、ザ・ド。 「トコロデ、ミ・シーは女だから、当然ミートモびいきかと 思っていましたが、ちがうんですか?」と、ザ・レが ミ・シーに尋ねた。 「ミートモもまーいいけれど、やっぱり、断然ヤーモモよっ! 女で剣を扱い悪い男たちを叩きのめすなんて、体が震えるほど 感激しちゃうわ!あんな女に私もなりたい!」 日ごろから、やんちゃでじゃじゃ馬な処のある、ミ・シーは自分の 理想像を海賊の王女に見出したのかも知れない。 「とにかく、良い劇でした。これは連日超満員になること 請け合いだね!」と、ザ・ドが結論つけた。 「私、興奮して今晩寝れそうもないわ!」と、ミ・シー。 「さて、そろそろ館に戻りましょう、二人ともいいですね」 と、流石に年長者であるザ・レが冷静に言った。 まるで羽をつけて飛んで行ってしまいそうなミ・シーを抱える ようにして男二人は、劇場を出て馬車に乗って館に向け出発した。 「明日も見たいわ!ねえ、いいでしょう?お兄様?」  と、ミ・シーが言う。
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