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彼女に限り、焦らしテクやら何やらネトネトしたものは一切ない。
彼女の手を力で振りほどくのは簡単だが、ベッドでの彼女は、実は僕に絶対的な威力を持っている。
やっぱりか!と僕が心の中で呻くのと同時に、彼女もぎゅっと目を瞑って叫んだ。
「その前に、香子さんとはどうなったんですか!」
「……」
確かに。
自分のことはすっかり棚上げして忘れていたが、懇親会で香子が牽制したままだ。
多分、大学時代からの恋人だの、離婚が成立したら僕と復活するだの、そんなことだろうが、香子がどこまで話を盛ったのか詳細はわからない。
いずれにせよ、事実を隠さず語るのが彼女の不安を解く道だと思った。
香子の牽制があっても、彼女は東条より僕を選んでくれたのだから。
“まだ失恋してません!これからです”
だからこんなに泣いたのだから。
涙でマスカラが点々とこびりついた頬をそっと撫でてから、僕はまだ目を固く瞑ったままの彼女を抱き抱えてもう一度起き上がらせた。
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