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「おい、チビ。今、何があったんだ?」
「えっと……分かんない」
やだ。そんな困った顔しないでよ。
私だって全く分からなくて困ってる。
「今の声……」
「知ってるの?」
「……んー。私も大分前に聞いたっきりだからよく覚えてないんだけど、似てた気がするのよねぇ」
現・黄泉の国主宰神、伊邪那美命の声に。
力無く笑うオネェさんが発した名前に、周囲はシーンと静まり返った。
皆して顔が引きつってる。
ど、どーしてそんな遥か高みの神籍を持つような方が、こんなちんちくりんの小娘の口を借りたんでしょーねぇ。
あはは。あはははは。
……気まぐれですように、気まぐれですように、気まぐれですようにっ!!
「大丈夫や」
綾芽の大きな掌がポンと頭の上に乗った。
顔をあげると、綾芽が優しい目で私を見下ろしている。
……うん。そうだね。皆いるし。
オネェさんも。都に戻れば千早様も、奏様達もいる。
あと、ついでにアノ人も。
「と、とりあえず、もうじき夜が明けます。色々手配を進めるのはそれからに。薫さん、すみませんが、人数分の朝食をお願いできますか? ここの宿の料理人さん達には申し訳ないのですが、薬を盛られないよう用心のためです」
「分かったよ。別にいつもと変わらないしね」
巳鶴さんと薫くんが話している声が段々遠退いて聞こえてくる。
今の今まで興奮して眠気なんか吹っ飛んだと思ってたのに、そうじゃなかったらしい。
安心できたせいか、一気にぶわっと来た。眠気が。
「……っとと」
一瞬意識がフッと抜けて、前のめりになったところを綾芽が受け止めてくれた。
でも、もう目を開けてるのも辛い。
「こちらに」
「はぁ。別にえぇですけど」
背中と膝裏に手を当てられ、抱きかかえられた。
……あ、お母さんの好きな花の匂いだ。
ってことは、これ、アノ人? やだなー。
でも……ねむい。もういっか。だれでも。おふとんつれてってくれるなら。
「……重いな」
ほんと、あとでおかあさんにいいつけてやる。
眠りの神様がいるのであれば、私はとうとうその神様に白旗をあげた。
朝ご飯だと起こされるまで、まさかのアノ人によるお座り抱っこでグースカピーピーと眠ることになった。
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