再会②

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『――剛さん……』 菊野の柔らかい声が耳に届いた様な気がして、俺は顔を上げる。 大粒の雨水が容赦なく降り注ぎ、眼鏡から頬に伝い、首筋を濡らしていく。 もう、ここまで来れば濡れようがなんだろうが同じだ。 俺は伊達眼鏡を道端に放り投げ、再び走り出した。 家を目指して。 今まで、菊野が居ると分かっている時には帰るのを避けていた。 彼女が帰った時間を見計らって家に戻ると、そこかしこに彼女の甘い薫りが残っていて、胸の奥がむず痒くなった。 その薫りを消し去りたくて、俺は決まって家中の窓を全開にし、風に吹かれながら彼女を想ったのだ。 ――菊野、いつ貴女は俺の中から消えてくれるんだ? と。
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