第一章 終わらぬ旅路

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 司令部ビルの一番奥、三司令官室の更に先、総司令官室があり扉の前にやって来る。 「掃除は済んでいるのでご安心を」  リュカ先任上級曹長が、盗聴器の類を除去してあると報告する。色々とあるのだろう。  代わりに扉を開けてやり道を譲る。ワリーフを先頭にして皆が部屋に入った。  黒檀のデスク、カーテンが掛かった窓の前にちょっと老けたファードが座っている。  島は踵を鳴らして進み出ると姿勢を正して敬礼した。 「長らく顔も見せずに申し訳ありませんでした」  立ち上がるとファードも返礼する。 「 数え切れない苦難を乗り越えよくぞ生きて戻ってきてくれた。私はそれだけで嬉しいよ」  デスクを横切り歩み寄ると抱擁を交わす。  ――少し痩せたかな。苦労を掛けた。  レティシアは裏切ったというが、島は微塵もそうは思っていない。 「また騒ぎを起こしに来ました、お叱りは幾らでもお受けします」 「なに、賑やかになって良いじゃないか。ここではなんだ、ワーヒドを貸し切りにしてある、食事をしながら話そう」  これまた懐かしい名前が出てきたと、島はゆっくりと頷いた。
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