愛しのわが子

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稔(みのる)を拾ってから、5年が経つ。 あの頃はまだ言葉も話せない赤子だったけれど、今や問題なくコミュニケーションというものを取れるようになった。 現在俺は20歳。 稔は5歳。 どういう経緯で拾った、とかは長くなるから、それはまた別の話で。 とりあえず、最近の稔には少し困っている。 「はお!みて!」 「んー、なに?」 小さな手の中に大人しく座るカエルがこっちを見ていた。おそらく一般的な種類のアマガエルだと思われる。子供の頃は平気で触っていたのに、大人になるとなぜか躊躇してしまうのは、どうしてだろう。 「懐かしいなぁ。俺もよく捕まえたよ」 近くで見ると、つぶらな瞳が剥き出しで、その上をビヨビヨの瞼が行ったりきたりするのが、ちょっと気持ち悪い。今にも顔に飛びついてきそうで、俺は一定の距離を保ったまま見ていた。 「はおは、かえるさんすき?」 カエルと同じく、無邪気で一点の曇もない瞳で見つめられれば、返答に困った。 嫌いではないけれど、特別好きでもない。 でも子供相手にそこまで正直になる必要はないのだ。俺は、少し考えてから、やはり無難な答えを返した。 「そうだねぇ……うん。すきかな。」 「じゃあ、ぼくとかえるさんどっちがすき?」 「そりゃあもちろん、稔だよ」
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