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その後編2 「桜の中で」(つづき)
思った通り、この日の彼女は、明らかに何かを抱えていた。
それが電話からも伝わっただけに、午後は、仕事中も気になって仕方ない。
だから、残業もそこそこに切り上げ、
俺は、逸る気持ちを抱いて自宅のある最寄り駅へと向かった。
そしてホームから改札へと下りてきてみると、
その向こうには、既に彼女の姿がある。
だが、見るからに彼女の全てがしょげ返っている。
俺は、小走りに改札を抜けると歩調を緩め、ゆっくり彼女に歩み寄った。
「マイカ。待たせたな」
だが彼女は、黙ったままでやや視線を俯け、小さくかぶりを振る。
そんな彼女の手を、俺は、いつものようにそっと握った。
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