「突然ですけど、部屋行っていいですか?」ほど困るものはない

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 こんなのはまだ序の口だ。「とりあえず山」を掘り下げれば〝もはや本人!〟という煽り文のついた激似DVDや、聖水と書かれた謎の缶ボトル、穴開きパンティなんてものも出てくる。  昨晩、柊は「誰だよこんなもんの持ってきたのは!?」と下着を菜箸で掴んで怒ったが、「文化サークル棟で配ってたんだよ。マジで!!」と興奮気味に答えが飛んできた。酔っ払いの言葉だ。信じてはいけない。  そんな馬鹿な。まだ聖水のほうが信憑性がある。だってすぐ作れるだろう?と宴の参加者達は阿呆な議論に盛り上がっていたことも記憶に新しい。  酒の強い家主は盛大なため息をついた。  友人たちは皆日中は善良だが、酒が入るとタチの悪いふざけ方をする。たまり場にしているワンルームの家主が見かけによらず純情で、一年近くの片思いをそのままにしているのも間違いなく一因だろう。 「『さっさと告白して、部屋の掃除をする理由を作るんだな。早くしないと俺たちが模様替えを完了させるぞ』って言われてもさ…」  起床3分。柊は足の踏み場を無理やり作りながらキッチンに移動することに成功した。     
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