心を、あげる。

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しばらくして、ようやく泣き止んだ。 「ごめんね、聡くん。」 「謝らないで良いよ。」 無理やり笑わないで。 そう言おうとしたけれど、それは酷い言葉だと思ってやめた。 真央の瞳は虚ろで、心ここにあらずといった感じである。 まるで、感情を失ったような表情。 「私、先輩に嫌われたんだなぁ…。」 「真央を嫌う人が居るなんて、考えられないな。」 「でも、『もう関わらないで』って言われたんだよ!!」 突然の大声に僕の肩が跳ねた。 真央の怒り声なんて、初めて聞いた…。 ハッと我に返りまた俯く。 「ごめん、聡くんは悪くないのに。私、ひどいね…。」 彼女は感情を失っていない。 心を半分、無くしてしまったのだ。 「大丈夫だよ。」 それしか言えない自分を恨む。 こんなとき、どうすれば良い? 何て言えば、笑ってくれるの? 「大丈夫。」 重ならない手を見つめる。 遠くなってしまった心。 彼女の瞳からまた涙がこぼれる前に、僕は息を吸い込んだ。 「真央。」 僕の心を、半分あげる。
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