67人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
蛇の目がジョージを見つめ返している。
「ああ、かまわない」
ジョージの声は夢見るような調子だった。それとも自分の耳になにか異変が起こっているのだろうかとタツオは思った。
「抗時間加速薬はいってみれば、脳と全身の体内時計に作用して、人の身体のなかのクロックを遅くするんだよね。だとしたら、この薬には人の寿命を延ばす効果が期待できるんじゃないか。外を流れる時間は変わらなくても、その人のなかの時間の流れはゆるくなるんだから」
タツオキが低く笑った。
「さすがにジョージは優秀だ。臨床ではそちらの方向でも研究がすすんでいる。末期ガンの患者200人に抗時薬をのませているよ。医者というのはおもしろいことを考えるものだ。ただ経口で投与するだけでなく、ガンの患部に最高濃度の抗時薬を直接注入してもいるらしい」
最初のコメントを投稿しよう!