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それから一ヶ月も経たないある日、お兄さんは亡くなってしまった。 車での移動中の事故だったらしい。 後で聞いたことだが、お兄さんは結婚を控えた恋人を四年前に事故で亡くしていたそうだ。 詳しくは分かっていないが、この事故も自殺だったのではないかという話も囁かれ、多くの住人女性が嘆いていた。 どちらの話も幼い私は受け止めきれず、毎日泣き暮れた。 頑張って学校に行こうとしても通学途中で泣き崩れ、結局帰ってくるというのを数日間繰り返していた。 又、私たちは彼のことを全く知らなかったことに気づいた。 彼の実家、出身地もわからず、葬儀に参列することもできなかったのだ。 私がなんとか学校へ行けるようになった頃、涙の代わりにひどく虚無感に襲われていた。 空っぽ。 開いてしまった大きな穴をすぐに埋められるはずがなかった。 お兄さんと私は、何か特別なもので繋がっている気がしていた。 私の中に、お兄さんの血液が流れている。 他の誰よりも強い絆で結ばれているのではないかと思っていたのだ。 きっとこれからもそばに居てくれると思って居たのだ。 でも、お兄さんには心に決めた人がいた。 私を助けてくれたのも、私とその人が重なったのだろう。 結局、お兄さんとの繋がりの脆さを突きつけられ、実感してしまったのだ。
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