始まり

2/3
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 強く両肩を掴まれ、壁に押し付けられた。 「なんでだよ、なんでわかってくれないんだよ・・・・・・っ」  わたしを見つめる漆黒の瞳に狂気の炎が揺らぐ。  肩に置かれていた手がゆっくりと首に伸び、締め付けられる。  あ、これは駄目だな。  そう考えながらも、わたしは【震える声】で彼を制止しようとした。 「あ、東くん・・・・・・」 「そんな声で僕を呼ぶな!!」  やばい、選択肢間違えた!  首にかかる手がいっそう強くなる。視界が白くなってゆく中、そっと、額に柔らかい何かが触れた。 「殺して、キスって。うわー、どん引きだわー。東くん、こーいう人なのかー」  バットエンドの音楽が流れる中、わたしは大きく伸びをしてヘッドギアを外した。  とたんに、そこは見慣れたわたしの部屋になる。  仮想現実、VRゲームが主流になった今の時代、乙女ゲームもVRになっている。  今わたしがプレイしていたゲーム『あやし、あやかし』もそうだ。  主人公は妖怪の祖母を持つ平凡な女の子。  両親の転勤をきっかけに田舎に住む祖母のもとで暮らしはじめ、そこであやかし達との交流が始まるーーと、こんな感じのストーリーである。  あやかし達は皆美形だし、ただの人間であるクラスメイトだって、負けないくらいイケメンだ。  先ほどのようにちょっと病んでる人もいるけど、年齢制限はR15だからそんなにキツいシーンは入らないしね。  キスシーンだって、有り、無しが選べる安心設定。  まあ、どうせ頬か額にするくらいだから、有りにしてるけど。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!