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目を凝らすと、遠くからゴンドラが唸りをあげながら近づいてきているのも見える。キューシャは慌てて近くの建物の影に隠れ身をひそめた。フードで顔を覆い隠す。再び家へと向かう道へ出直そうとすると、家の近くにゴンドラが止まる、金属の擦れる音がした。 「……」 すくんだ足を動かすことが出来ないまま、キューシャは家のベルが鳴るのを遠くに聞いていた。このベルに応えるために今すぐこの影から飛び出すべきだ、と心の中で悲鳴をあげる自分を抑え込む。 「……」 息をのむキューシャをよそに、家の扉が開く音がした。先ほど玄関でラボ隊員と話をしている時にカイが出てきたのも、足音が聞こえたと言われたことに対応しようとしてくれたのだろうとキューシャは理解していた。サヤやナナが出るよりはカイが出て誤魔化した方がいいと判断したに違いない。さっきの状況でのカイのそれは、英断に等しいものだった。その上で、キューシャは玄関を、開けて欲しくはなかった。
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