四章

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屋根裏部屋にいるあの娘の部屋に鍵をかけて、閉じ込めた。 娘は、驚き戸惑い、何度もドアを叩く。啜り泣く声も聞こえる。 娘は、ドアに縋り付いているのだろう。しゃくりあげる声とともに、古いドアがカタカタ鳴った。 私は、昨夜、城の庭で見たことをドア越しに話し、自業自得だと言ってあげた。 そして、今まで我慢していた心のうちを全て、吐き出した。 「私は、お前のことが嫌いだったのよ! ずっと! お前の母親も! あの人を手に入れたのに、あの人はずっとお前とお前の母親のことしか見ていなかった。お前を死んだ女に重ねて愛し続けた。私がどれだけ惨めな思いをしているのかも知らないで。私を隣に置きながら、ずっと私を可哀想な女として同情して見ていたのよ! 私を見下していたのよ、お前達は! あの人をさっさと私にくれていたらこんなことには、なっていなかったわ。だって、私の方がお前の母親よりも、お金も権力も地位も何もかも優れていたのに。見た目だけが取り柄のお前の母親は、あの時、私を見下して、死んでもなお、亡霊のように私を不幸にする。そして、その亡霊の幻影を見せるのはお前なのよ! 私が不幸になったのは、全部、お前とお前の母親のせいなのよ!」 吐き出してみて初めて分かった。 私は、あの女が羨ましかっただけ。 自分よりも劣っている女が、幸せそうな顔をしているのが許せなかった。 気付いたからといって、今更、引き返せない。 それに、自分の気持ちが分かったからといって、あの女とあの娘を許せるわけでは無い。 だって、私から夫の愛情を奪ったのは事実だもの。
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