四章

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あの娘は、何処に隠していたのか、片方の靴を持って来ていた。 すました顔をして私や私の愛娘を通りすぎ、靴の片割れをを持っている城の使者に深々と頭を下げた。 そして、使者の持っていた靴と自分で持ってきた靴を揃えて履いてみせた。 靴はあの娘の足にピタリとはまり、そうあるのが当然だというほどに合っていた。 城の使者は歓喜し、何よりも驚いていた。 「今日は、素晴らしい日だ! 貴女が王子の探していた女性ですね! 王子が城で貴女のことを待っています」 私の可愛い娘達も驚き、二人で顔を見合せていた。 私は、呆然とそこに立って、後悔とも反省ともいえないようなことを考えているだけだった。 屋根裏の扉は古くなっていたから、非力な娘でも壊すことくらい出来たのだろう。 この娘が王子と結婚することを考えると、屋根裏に閉じ込めた時に本心を言ったのは間違いだった。 舞踏会で、娘達の結婚相手をもっと多く見つけておけば良かった。 そんなことばかりを考えていた。
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