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「暁君がひよりを貰ってくれるって言ってくれたのよ。それに元はと言えばアンタがひよりを過保護にし過ぎたせいで、まともに家事も出来ない女の子になっちゃったんだからね!?ひよりを一人で置いていけないのもアンタの責任でもあるのよ!」
実は私が家事が出来ないのもお兄ちゃんのせいでもあるのだ。
私が小さい頃からママと一緒にご飯を作ろうとするといつもお兄ちゃんが邪魔をして、私に一度も包丁を持たせなかった。
「そ、そんなこと言われたって、ひよりが包丁で怪我したらどうするんだよ!洗い物して可愛い手が荒れたらどうするんだよ!」
そう。お兄ちゃんはいつもこの台詞をバカみたいに言っていた。
洗い物も、洗濯も、掃除も、私はお兄ちゃんのお陰で一度もやったことがない。
ママが怒ると私の変わりにいつもお兄ちゃんがやっていたから。
私もいけないのだが、ラクが出来るなとお兄ちゃんに甘えていた。
お兄ちゃんが家を出た二年前からは勉強ばかりしていたのでママも煩く言わず、私は今まで通り家事を一切してこなかった。
「何、馬鹿な事言ってんのよ!ママは毎日やって手が荒れまくり!世の中の主婦は皆やってるのよ!ひよりだってそれをいつかやらなきゃいけないのよ!それに私は暁君との結婚を承諾してるから、アンタはいい加減に妹離れしなさい!」
確かにそうだよね。
世の中の主婦は皆やってる。
私もいつかは自分でやらなきゃいけない。
今まではお兄ちゃんのお陰でラク出来たなんて思っていたけれど、今となると恨みたくなる位憎い。
こんなことになるなら、お兄ちゃんに何を言われても家事の手伝いしとけば良かった……。
「母さん……!どうして俺の味方をしてくれないんだよ……!」
そして大人げなく泣き出したお兄ちゃん。
「壮亮は放っておいて朝食を頂きましょう。折角のおばさんの美味しいご飯が冷めてしまいます」
暁君はそんなお兄ちゃんを無視して笑顔で言った。
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