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「もしかしてそれは…」
「そっ、治療薬。
まさか美右の私服に隠してるとはね」
なるほど、どうみて見つからなかった訳だ。
美左は美右の私服など使わず
楽なスウェットなどを着ていた。
ある意味一番安全な隠し場所である。
美左は雲で覆われた空を見上げる。
「花火、何時からか知ってる?」
「九時だろ?」
「って事は中止なんだろね」
彼方は時計を見る。
21:23
雨天中止の可能性が高かった。
「最後に見たかったのにな…」
「最後?」
「ほら、美右だと飲めないじゃん?」
その瞬間、美左は小瓶の蓋を開ける。
彼方が「待て!」と叫ぶのと
薬を飲み込むのは同時だった。
その瞬間、美左は後ろへ倒れそうになる。
慌てて彼方がそれを支えた。
「美左…」
「初めてだよ…あの娘の為に…
何かしてあげるのは…」
美左の口調は弱々しかった。
その瞳は今にも閉じてしまいそうだ。
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