chapter.1

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「もしかしてそれは…」 「そっ、治療薬。 まさか美右の私服に隠してるとはね」 なるほど、どうみて見つからなかった訳だ。 美左は美右の私服など使わず 楽なスウェットなどを着ていた。 ある意味一番安全な隠し場所である。 美左は雲で覆われた空を見上げる。 「花火、何時からか知ってる?」 「九時だろ?」 「って事は中止なんだろね」 彼方は時計を見る。 21:23 雨天中止の可能性が高かった。 「最後に見たかったのにな…」 「最後?」 「ほら、美右だと飲めないじゃん?」 その瞬間、美左は小瓶の蓋を開ける。 彼方が「待て!」と叫ぶのと 薬を飲み込むのは同時だった。 その瞬間、美左は後ろへ倒れそうになる。 慌てて彼方がそれを支えた。 「美左…」 「初めてだよ…あの娘の為に… 何かしてあげるのは…」 美左の口調は弱々しかった。 その瞳は今にも閉じてしまいそうだ。
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