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ドラゴン/クラウン
木造校舎は補修もままならず、変色した木材はそこらじゅうでささくれ立っていた。
取っ手の金具は黒ずんでいて、手を触れるのをすこしためらう。そんなささいなことを気に留められるくらいだから、どうやら自分はあまり緊張していないらしいと安堵する。
引き戸に力を込めた。
中年が痰を切りそこなっているような汚い擦過音を立ててから、教室内の光景が目に入ってくる。
教室に入るよう促した先生は三十過ぎの太った男で、感情のない瞳で僕を転校生だと紹介した。
僕は二十人にも満たないクラスメイトたちに頭を下げる。
「よろしくお願いします」
歓迎の拍手を聞きながら頭を上げる。
――その女の子は直接、床に座っていた。
窓際最後尾の席の後ろで、体育座りをしている。
ただ、着ているものは真っ白だった。襟もリボンもスカートまでもが白いのだ。
手を叩くわけでもなく、僕を見てもいない。窓の外の空を見上げて、口を半開きにしている。
開いている窓から風が吹き込み、セミロングの黒髪を揺らした。
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