エピローグ

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エピローグ

「せんせー!さよーならー」 「うん、さようなら。また明日待ってるね」 陽も落ちかけた夕暮れ時、小さな手を引かれて最後の園児が帰路に着く。 あどけない笑顔とはしゃいだ高い声が茜色の空に木霊する。 夏の夜道。引かれた手。 覚えたばかりの歌を、口ずさみながら歩く後ろ姿。 それは遠い日の記憶と重なって。 きらきらひかる おそらのほしよ まばたきしては みんなをみてる きらきらひかる おそらのほしよ 「…懐かしいね、その歌」 つられて口ずさんだ歌へかかる穏やかな声。 振り向けば、夕暮れに溶け込むように、正門にもたれかかる姿が映る。 どれだけの時が過ぎようと、決して離さない運命で繋がれた相手。 「ただいま」 物語は終わらない。 始まりの歌は確かにこの心に宿っている。 Me regarder d'un ?il tendre, 彼は優しい目で私を見るの Mon c?ur dit a chaque instant, そのたびに私の心は言うの Peut-on vivre sans amant ? 人は恋人なしに生きられるものなのかと きらきらひかる おそらのほしよ どうしてあなたは、私の『願い』を叶えてしまったのでしょうね…? 「好き。大好きよ…だから」 だからずっと傍にいて。 これは私の最後の祈り。 何十年、何百年経って、この身が腐り落ちて溶けていったとしても。 手放してなんかあげない。 傍らを歩く彼は、困ったように微笑んで。 迷うことなく、手を繋ぐ。 瞬く星は数え切れないほどあるけれど。 私の星は、ここにある。 この手の中に。 いつまでも――… あの日捕まえた、私の小さな星  
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