第一話「出会いの始まり」

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第一話「出会いの始まり」

 夜のうす暗い住宅街。異常な光景を見てしまった。男の人が、住宅の屋根から屋根へと飛び移りながら移動しているのを目撃した。だけど、屋根を飛び移るような行為そのものについて私は特に驚きはしなかった。こんな時代のこんな国では、ほとんどの人間が出来るような行為だったから。さらに言ってしまえば、その男の風貌をしっかりと確認することが出来るくらいに私の目は良い。そういう風に成っているから。この国のある制度によって。  じゃあ何が異常なのかというと、その男が異常に思えたから。肩周りの筋肉が異常に発達しており、開いた口から覗く歯は鋭く尖った牙のように。そして、特に変だと思ったのが、額から生えていた二本の角。人間というより、化物に近い存在に思えてならなかった。 「なんなのよ、あれ?」 憧れていた桐生高等学校に入学したばかりの私、榛名結衣は何かと物入りだったこともあってか、文具店でついつい長居してしまったこと、その帰りに本屋で長時間立ち読みをしてしまったことを後悔した。  目で見ても理解出来ない、頭で考えても理解出来ない。やがてそれは私のなかで気味の悪いものに変わっていった。見たことのないものに抱く恐怖心とか。
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