パーム

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私はこの部屋から見える空が好き。 毎朝、カーテンの隙間から溢れる光で目を覚まし、ベッドから上半身を起こしてカーテンを開けて窓の向こうを眺める。 晴れの日は窓を開けて季節の風を感じ、雨の日は窓越しから聞こえてくる雨音に耳を済ます。勿論曇りの日だって嫌いじゃない。私にとって窓の向こうの世界はいつだって心の平穏を与えてくれる。 今日は見事に晴れ渡っていて、雲一つない青空が一面に広がっていた。 しばらく空に見惚れていると、隣の部屋から物音が聞こえてきた。彼が起きたんだろう。 少しすると足音がリビングへと向かう。そしてカチャカチャと音が鳴り、その後、フライパンの上でジューッと油が弾ける小気味の良い音と香ばしい匂いが私の部屋に流れ込んできた。 私は目を瞑り、ゆっくり鼻から息を吸い込んで彼の奏でる朝の演奏会を楽しんだ。 「雅、おはよう」 「おはよう。ねぇ、マサキさん見て。今日はとても良い天気よ」 私の部屋に朝食を運んできたマサキさんが優しそうに微笑んでくれたから、私も彼に釣られて頬が緩んだ。
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