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そんなタイトルが軒並み踊るショッピングセンターの片隅を、3人組の女子高生らしい子供達がうろうろしているのを、トイレから出てきた柏木舞はなんとなしに見ていた。
売り場はその階の中心で賑わっているのに、何でそんな隅の方に、と見回すと、壁の上の方に黒い横看板に紫色の文字で、占いの館にようこそ!と書かれている。
「どうする?入る?」
「今日こそ入る、って言ったのあんたじゃん、先に行きなよ!」
「だって、いくつもあるんだよ、しかも暗いし、どれに入っても怖くない?」
舞が見ていることも、反対側で制服の警備員があくびを噛み殺して苦笑しながら眺めていることも、彼女達には関係ないらしい。
「だって2組のナツが占ってもらって、アドバイス通りにしたらイケメンにコクられたんでしょ?」
3人の中でひときわ髪の色が黄色に近い、はで目な化粧をしている子が、子犬の吠えるようにキャンキャン喚いている。
看板の下の通路らしき所は人がすれ違う位の幅しかなく、確かに奥は薄暗かった。
興味のない人や、興味があっても、余程占ってもらう決意がなければ入りたくないだろう。
結局、その子達は散々わめいた後で、通路に入ることさえ諦めて帰ってしまった。
舞は、一部始終見ていた自分も相当暇人だ、と自嘲しながら通路に近寄ってみた。
「確かに、不気味かも」
ようこそ、と書かれているくせに、通路の入り口に案内板があるだけで、奥には人の気配もない。
案内板は通路の手前から順番に占いの店の名前と種類が書かれている。
「これだけ?アピールポイントもない…」
手前から、手相占い、次が水晶占い、星占学、易占、そして一番奥がタロット占いだった。
「ふーん、タロットかぁ」
何かのコミックでタロットカードを扱ったファンタジーを読んだことがあって少しは知っていた舞は、案内板をしげしげと覗き込んだ。
「それ、良く当たるよ」
「ひゃっ?」
ふいに、上から降ってきた声に、舞は飛び上がった。
いつの間にか横に長身の男の人が立って自分を見下ろしている。
大学生くらいだろうか?パーカーにジーンズ、肩掛けのポーチにベルトバッグを付けて、細身の長いケースを持っている。
「驚かせちゃったかな?ごめんね。でも、本当に良く当たるから、見てもらいたいことがあったら行ってみたら?じゃあね!」
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