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当たり前だ!栞は渡さない。」 鈴木は殴られた頬を手で覆い、起き上がった。 俺は、原田に抱き起こされたまま。 彼に抱き締められる。 「それならいい。 栞のこと、君が護ってくれるんだろ。 俺じゃダメみたいだから・・・」 「ならなんでこんなことした・・・」 「栞のこと、護ろうとした・・・って言ったら、信じてくれるかな?」 俺の心をよそに、二人はにらみ合った。 俺は、そんなに弱そうに見えたのか? 護られなければならないくらいに? 「栞は、俺が護る。」 原田が、俺を抱き締めたまま、声を押し殺してそう言った。 俺の心は震える。 鈴木が、フッと笑い、 そして、ゆるりと立ち上がった。 「そういうことなら、俺はもう用無しかな。 栞のこと、頼んだよ。」 薄笑いを残して、鈴木は去った。 もう。 鈴木に悩まされずに済むのか? でも・・・原田が・・・ 俺のこと、まだ抱き締めていた。 俺は身じろぐ。 「はなせ・・・」 原田は俺から腕を引いた。 俺を見つめる瞳が辛そうだ。 「俺が・・・護るって言っただろ・・・ これからも・・・お前のこと・・・」 「だから、それは余計なお世話だって言ってるだろ。」 俺は服を整えながら、原田に向かって言った。 原田のことは好きだ。 でも、気持ちが間違っている。 やつには、彼女が居る。 俺のことよりも、彼女のことを考えるべきだ。 少し・・・ 少しだけ、原田に感謝しながらも・・・ 少しだけ、心が動いたけれど。 俺は、原田にもたれ掛かるようなことはしなかった。
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