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第2章 夜空に願いをこめて (リュート視点)
「リュート おめでとう。」
愛する可奈と、まだ1度も見たことがない娘のことを思いながら、窓からみえる空を見上げていた俺に、高くよく響く声がかけられた。
「王皇后陛下。」
振り向くと、ベリッサ前王妃が立っていた。
「誰もいないんですから昔のようにべリッサと呼んでくれたらいいのに。仰々しくて嫌だわ。」
ベリッサ前王妃は兄嫁でもある。幼い頃から知り合いだったが俺はこの女が嫌いだ。
自己中心で高飛車な態度は好きになれない。
でも死んだ兄はそんな高慢ちきなこの女がかわいらしいと言ってたんだから好みっていろいろだなぁと思う。
兄が去年死んで、兄の息子が王位を継いだが周りの不満が多くまだ安定してない。
俺も後援として手伝ってはいるが、16歳しかなってない甥に国民は不安に思っている。
そんな時に、前王の弟の俺が 前王妃を軽くあしらっていい訳ではない。
「そんな位置がありますから。ところで、おめでとうとは?」
「あなたが研究していた病気の治療薬。認定されたんですって。」
「ああ 後援は私ですが筆頭医師キーンががんばってくれたおかげですよ。まだまだ開発中ですがね。ああ キーン。」
長い銀色の髪を一つにまとめ白衣を着た男が廊下を通るのが開いたドアから見えた。銀髪は王族によく見られる。キーンも王族で俺とは従兄弟である。
キーンは俺の声に部屋に入ってきた。
「リュート殿下。お話中すみません。
研究のことで相談したいことがあるんですが......ちょっと急ぎなんですが......」
と王皇后をちらっと見る。
王皇后の表情が厳しいものに変わる。
キーンをじろっと睨んだ。
『私が話してるのを邪魔をするなんて』という心の声が聞こえてきそうだ。
「王皇后陛下 申し訳ありません。急ぎの用事ができてしまいました。
また私のほうからあらためて報告に参ります。」
と彼女にそう言った。
軽くため息をついたベリッサ王皇后は
「仕方がないですわね。男の人の仕事の邪魔をするのもよくありませんからね。あなたの体は完全な健康体とはいえませんから無理しないでね。」
と 熱い視線を俺に送り、部屋をでていった。
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