夜空への願い事

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 灯りの落ちた豪邸を、殺した足音が移動していく。邸内は広く、通路は大人が三人横に並んでも余裕がある。僅かに床に軋みを上げさせる足音の一つは僕の物。残り二つは同部隊の仲間のものだ。殿を務める僕の眼前、闇の中にぼんやりと輪郭を浮かび上がらせるタイトな黒色の戦闘服に身を包んだ二人が、慎重な様子で――しかし素早く邸内を進んでいく。  仲間の背後を警戒しつつ、僕は地図に目を向ける。その地図は空間に浮かび上がって存在していた。僕がどこを向こうと必ず視界の中に存在し、不要な時には薄い半透明となり視界の隅で邪魔にならないよう控えている。  迷宮じみた邸内地図の中には80%という数字と割合を示すゲージが添えられた黄色のマーカーが記されている。黄のマーカーへと近づく緑の三角は僕ら三人を示していた。  通路が中庭に面するように折れる手前、僕らは一度足を止める。先んじて僕が中庭を覗き込む。  夜空に一人寂しく輝く月に照らされる中庭、その中央に石造りの教会が静かに存在を主張している。その周囲を探るように飛ばした視線が複数の輪郭を捉え、耳が機械的な小さな音を拾い集める。     
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