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貨物室に戻ると、ジャレッドを含め、古参の連中が問うような視線を投げてくる。
「何でもない」と淡泊に言うと、何人かはニヤニヤと笑い、ジャレッドが顎を示すようなジェスチャアをする。
手で拭えば、先程の返り血だ。
「隊長、そいつは何です? チリソースですかな?
ブリッジで自分達だけタコスパーティとは、ずるいですなあ」
おどけてみせるコンラッド。つられて何人かも、野太く笑う。
「気を引き締めろ――」
苦笑交じりに、釘を刺しておく。
小窓から外を見遣れば、ジェットエンジンを搭載した鈍色の翼を広げる不恰好な鳥達が、ずらりと編隊を組んで飛んでいる。
それに混じる小さな護衛機。
と――
それらの一部が、不規則に蛇行し始めた。
中には空中で機体同士をぶつけ、爆砕するものまで。
他の機体内部でも、”浸食”が始まった。
そして地上から、赤々とした火焔球や、糸が伸びるような雷撃が飛び交う。
前後して、蝙蝠の羽をもつ巨大な人型が見受けられるようになる。
「おっぱじめやがったか!」
楽し気に言い、口笛まで吹くコンラッド。
そんな古参連中とは対照的な新人たち。
頭を抱え泣きごとを漏らす者や、必死で祈りの言葉を唱えている者。
祈りなど、――無意味だ。
神は俺達を救いはしない。
自らを救うのは、ただ自らでしかない。
その事を20年前のあの日――
思い知らされた。
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