鷹人間の眼

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鷹人間の眼

「はぁ……疲れた、食堂車で何か食べたいな」 『疲れた時は甘い物』という都合のいい言葉を、任務や仕事の後は堂々と使える。 マスク姿のオッサンは隣の屋根に残っていたので、移動して聞いてみる。 「あの、もう帰るんですか?」 腕組みしてこちらをガン見していたが、呆然と立ち尽くしてる感じだった。 「すいません、終わりですか?」 走る列車の上なので、聞こえにくいのかもと、声を大きくしてみる。 ハッとしたように腕を解くとゴホッと咳き込み、背中を叩いてあげた。 「ああすいません、いや突然で色々驚いてしまって」 「……はぁ」 二人で下に降りると滋さんが現れたのでジロッと睨んだ。 いや俺も加勢したよ『狙撃で』と、自分をフォローしている。 「社長、オーナーの狙撃は成功したけど鷹人間に逃げられてさ、ダサいから後で悪口言ってやって」 と聞いても、キツネ面でダメなら誰も無理だと分かるので何も言えない。 「戻るんですか?」 「俺達はこのまま鷹の世界に入るけど、百合ちゃんは……」 帰りたいし、いい加減休ませて欲しいと猛抗議した。 次の駅で降り口を尖らせる滋さんをスルーし、残りのメンバーに挨拶をしたが、皆『魔王』でも見たようにビビッてる気がする。 全員敬語になり、目を合わせないのも化け物扱いされてるようで、慣れているがズキンとくる。 なのに照れてないで言ってみればと、滋さんは皆の背中を叩いて押していた。 「えっ?!」 「可愛くて噂以上に強いから、アイドル目の前にしたファンの気分なんだよ」 「あ、握手してもらえますか?」 「あ、はい……」 帽子を深くかぶってるので、誰がどれか分からないが、何故かプチ握手会を終え扉を潜る事になった。 「いい?あの子は俺のだから手を出したら殺すからね」 「いや、まだ彼氏はいない匂いがする。恋愛は自由だろう」 どんな匂いか知らないが、当たっているのが何となく恥ずかしい。 「アンタは歳考えたら?社長の次にナイ」 そういう滋さんと掴み合いが始まったが、静かに礼をしてから扉を出し、パネル部屋に戻った。
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