初めての

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初めての

「拓哉、お弁当持った?」 「あんた何回聞いてるのよ。」 私は 斉藤 和江(さいとうかずえ)32歳。 息子の拓哉が今日初めて小学校に1人で行く。 祖母は心配しすぎている私に呆れた顔で言ってくるが、 離婚してから女手一つで育てた拓哉が心配でしょうがなかった。 地元の小学校に行かせるか私立に行かせるか悩み、 お父さんが居ない事でよじれた人間になるのを恐れて私立に行かせたので、 学校まで20分ほど電車を乗り継いで掛かってしまう。 裕福な訳ではないのだが前の旦那からの教育費や、 住んでいる家も祖母の家に転がり込んだおかげで家賃も掛からず、 私の仕事も今のところは順調だったので贅沢をしなければ問題無さそうだった。 まだ学校に通い始めて10日目。 1人で近くのコンビニですら行かせた事の無い拓哉が、 私が仕事で一緒に行ってあげられないばかりに1人で学校に向かう。 祖母に頼もうとしたがさすがに80歳を超え足腰も悪いのでお願い出来ない。 すると、 「ママ、僕大丈夫だから。」 ランドセルの中身を確認しながら拓哉は言った。 拓哉は私を不安にさせないようにいつも通りの表情をしていたが、 私からしてみれば強がりの顔にしか見えなかった。     
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