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 それから、二ヶ月が過ぎた。  十一月、下旬。街路樹のポプラは黄色くなった葉を落として、電線にとまるスズメは寒そうに丸くなっている。季節は、冬になっていた。  午前七時の閑散とした道路に一台の車が通り抜けて、風を巻き起こす。道路の端に溜まった落ち葉がカサカサと音を立てる。私は思わずマフラーに首を埋めたけれど、風はスカートを抜けて太ももを撫で上げた。 「さむ……」  一人そう呟いて、私は少し早く歩き出した。  校門を潜ると、見慣れた校舎。校門脇の木にくくりつけられた看板には安っぽいデザインで「合唱祭まであと1日」。合唱祭なんて、と少し思う。文化祭や体育祭に比べたら盛り上がってるクラスも少ない。まぁ、うちのクラスは盛り上がっているけれど。  一週間前から、八時に登校して三十分ほど練習しているのだ。割合、出席率は良い。
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