森の熊さん

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「地下鉄に~乗って~ あれ? 続き何だっけ」  替え歌を口ずさみながら、お気に入りのエナメルのパンプスを穿く。備え付けの鏡を覗き込むと、完璧にメイクされた自分の顔がにっこり笑った。 「よし、完璧! いってきまーす!」  廊下の奥にある閉まった扉に向かって言い、みんなの返事も待たず玄関を飛び出した。  暖かな陽射しを浴びながら、向かうのは徒歩五分の最寄り駅。  私は自分の仕事も電車も大好きだ。一定のリズムを奏でながら、心地好く揺れるあの感覚が堪らない。  せっつかれるようにホームになだれ込むと、肩と肩がぶつかり合う。暫くすると轟音と共に、こもった空気が一気に流れる。  髪の毛があちこち踊り、整えるなり電車に乗り込んだ。
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